京都市上京区の路地裏に佇む「源湯(みなもとゆ)」。「銭湯を日本から消さない」をモットーに各地で銭湯の再建を行う株式会社ゆとなみ社が運営を引き継いだこの銭湯は、かつて居住スペースだった場所をロビーやくつろぎスペースに改装し、2階にはギャラリーや、古本や古着などを取り扱うお店などのテナントが入る個性的な空間が広がっています。

脱衣所の横に広がるくつろぎスペースには、スタッフやお客さんから寄せられた漫画やゲーム、レトロな扇風機、冬にはこたつが置かれています。近所の常連客や地元の大学生が、友達の家に遊びに来たかのように思い思いの時間を過ごしています。家で一人きりで過ごすよりも、誰かの気配を感じながら本を読んだり、お風呂上がりに涼んだりできる——そんな「ほどよい距離感の居心地のよさ」が源湯の大きな魅力です。

源湯では、浴室やくつろぎスペースを使った音楽ライブや紙芝居、ZINE(個人誌)の即売会、フリーマーケット、移動式の焼き芋屋さんとのコラボなど、多種多様なイベントが日常的に開催されています。これらの多くはお客さんなどから持ち込まれる「ここでこんな面白いことがしたい」という熱量に応える形で実現しています。

「やりたい人の熱意と責任感があれば形にする」と語る店主の中村勇貴さん。スタッフ自身が好きなものを散りばめ、イベントを楽しむ姿勢が、自然と外からの面白い人や企画を引き寄せています。お風呂に入りに来た人がたまたまイベントに出会ったり、イベント目当てで訪れた人がお風呂のファンになったりと、空間を活かした相乗効果が生まれています。

地蔵盆の際に地域の催しと連携したり、町内会の会議の場所として開店前のくつろぎスペースを貸し出したり、イベントを行う際にはご近所に挨拶を行うなど、地域の一員として、地域の交流拠点として存在しています。番台では「最近あの常連さん見かけへんな」「元気にしてはったよ」といった会話が交わされ、地域の人々にとっての緩やかな見守りの場としての機能も果たしています。

「何か特別な仕掛けをするのではなく、自分たちが良いと思う空間をつくり、ただそこにあり続けること」。スタッフやお客さんの「好き」が自然体で混ざり合う源湯は、銭湯という枠組みを超えて、人々がふらりと立ち寄りほっと一息つく、まちの温かな居場所であり続けています。