万葉集でも詠まれた歴史ある秋の七草の一つであり、昔から香りの良い植物として愛されていた藤袴。平安時代には、乾燥させた藤袴の香りを着物に移したり、匂い袋として着物に忍ばせ持ち歩いたそうです。また、お風呂の香りづけや薬湯としても使用されていました。

藤袴(フジバカマ)

しかし、そんな藤袴は今、環境省のレッドリストで「準絶滅危惧種」に指定されています。かつてはどこでも見ることができた藤袴でしたが、河川の改修や開発により、どんどん生態系が崩れていくことになりました。そんな藤袴の保全・育成をされているのが源氏藤袴会です。

源氏藤袴会では育成・保全を続けていくために、次の世代に受け継いでいくことにも力を注いでいます。その取組の一環として、毎年5月と10月に京都市内の銭湯の協力のもと、藤袴湯を実施しています。

きっかけは、2020年に玉の湯の店主に、「藤袴を残していくために、藤袴湯を復活させたい」という思いを伝えたことでした。そして、玉の湯の協力のもと、藤袴湯が復活したのです。

それから毎年取組を継続し、協力してくれる銭湯も増えていきました。2025年5月には3日間に渡り5つの銭湯で開催され、1,556人が藤袴湯を堪能しました。入浴者からは「良い香りに包まれた」、「肌が保湿されて温まった」などの声を聞くことができました。2026年5月にも玉の湯、桜湯、むらさき湯、栄盛湯、サウナの梅湯、初音湯、平安湯、大黒湯の協力を得て藤袴湯が開催されました。

また、次の世代に受け継いでいく取組として、他にも源氏藤袴会は2019年から小学校での藤袴の育成にも携わっています。そして、京都の銭湯で楽しまれている藤袴湯には小学校で子どもたちが育てた藤袴も使用されています。2026年5月の藤袴湯では、京都府内を対象にした「子ども入浴料金無料化事業」により、子どもたちは銭湯に無料で入浴でき、親子で藤袴湯を楽しみました。その子どもたちの中には、初めて銭湯に来た子もおり、大きなお風呂に興味津々だったそうです。

藤袴湯を通して、藤袴の花そのものの魅力だけではなく、茎や葉がお風呂の香りづけや薬湯としての魅力を伝えることができました。また、それを銭湯のお風呂で実現したことで、より広い層への認知に繋がっていく。そういった地域の連携が増えていくことも、藤袴と銭湯ともに魅力や文化が受け継がれていく一助になるのかもしれません。